京都在住 アートNPO代表さとうひさゑの日々の記録です
by amagasato
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カテゴリ:作品( 2 )

作品1 【ひだまりつつみ】

―今日のうちに降るだけ降ってしまえばいいのよ―
受話器の向こうで母が言った。

相槌を打ちながら片手でガラス戸を開け、グレーの空を仰いだ。
激しくはないが単調に降り続いている。家族内での大きな行事はなんとなく居心地が悪い。
改まるのも気恥ずかしい。
受話器を置くことができず、庇から不安定なリズムで落ちる水滴を数えていた。

玄関先でチャイムが鳴った。
明日の時間の念押をし、急いで電話を切った。
ドアを開けると白い服を着た初老の男性が立っていた。

「はじめまして、あなたにどうしてもお会いしたくて」

男性は彼の親類だと名乗った。明日の式には、訳あって出席できないので足を運んだのだそうだ。

「以前、あなたがいらしたとき、裏庭から声だけお聞きしたのですよ。よかった、思ったとおりやさしそうな人で。わたしも安心しました。」

そう言いながら、男性は四角い風呂敷包みを差し出した。

わたしが両手を出して受け取ると、驚くほど軽かった。男性は深々とお辞儀をし、結び目はゆっくりと開けてくださいね。
と言い残し、雨に濡れながら帰っていった。

その後ろ姿には白いふさふさとした尻尾が満足そうに揺れていた。


ドアを閉めると涼やかな風がひとひら走り抜けた。

わたしは風呂敷包みを膝に置き言われたとおりに結び目を解いた。
絹のような布は掌をさらりと滑り落ち、その瞬間こうばしい匂いとやわらかな光が部屋中にひろがった。
―干したての布団にもぐりこんだときのぬくもり、草の上をはだしで駆け回った感覚…湧き上がるイメージに堪えきれず目を閉じた。

しばらくしてゆっくりと目を開いた。

窓ガラスには水滴がきらきらと光っていた。
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by amagasato | 2011-11-07 23:20 | 作品

3月11日

「3月11日」

特筆すべきことなど 何もない日になる予定だった

仕事場の引っ越しを目前に控えて
追い立てられて
これ以上仕事を増やさないでくれ、という
気持ちが念頭にあった

2011年3月11日
「この日何してた?」

これから何十年も私たちはこの日のことを話題にするだろう

何か それが ショック だった
そんな日が「今日」になったことがショックだった

そのときわたしは
仕事場の 一番窓に近いデスクに座っていた
あの 長い 眩暈のような 地揺れ

同じ揺れが、東北の方で大きな津波を引き起こしているとき
わたしは そんなことを 考えていた

子供が 孫が 生まれたら
彼らはわたしに
「その日何してたの?」と聞くだろう

外国人の友達ができたら
「その日はどんなことになってたの?」
と聞かれるだろう

そんな日が「今日」になったことがショックだった
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by amagasato | 2011-04-24 16:35 | 作品